このサイトを始めてそれなりに時間が経過してるのですが、リスナーさんから
「税理士のネタってないですよね?」ってメッセージを頂きました。
そういえば書いたこと無いなぁ…と。
どうしてもとっかかりがメディアで取り上げられた事案や偶然目に入った事案を掘り下げているのでその過程でどうのも税理士さんの情報が入っていなかった様子です。
そんなこんなでネットで色々眺めていたら、税理士というか政治というか団体に加入する事の義務と意味を考えさせられる事案を見つけたのでご紹介を…
「南九州税理士会政治献金事件」
と呼ばれている、政治献金にまつわるお話です。
なんでも2014年の行政書士試験でこの判例に関してそっくりそのまま出題されたとか。
丁度最近、国政選挙もあったことですし、政治献金に関しても考えるいいきっかけになるのかな。とも思います。
まず事件の経緯なのですが、
Wikipediaより引用
税理士の強制加入団体の一つである「南九州税理士会」の会員である税理士が、政治献金として使用される特別会費5,000円の納入を拒否したことで、
南九州税理士会は、その税理士会の役員選挙において、納入を拒否した税理士に対しての役員選挙における選挙権(投票する権利)、被選挙権(立候補する権利)を抹消し役員選挙をおこないました。そこで、
・原告は特別会費の納入の義務を負わないこと
・不法行為(役員選挙における選挙権・被選挙権の抹消)に伴う慰謝料の請求を求めて出訴されました。
第一審では原告側の主張が認められ、税理士会側が敗訴
控訴審では被告側の主張が認められ、税理士が敗訴最高裁で、各会員に課す協力義務には場合によっては人権侵害に当たることがある。と言うことで税理士の勝訴で結審しました。
ここで前提のお話なのですが、
税理士は税理士である以上、「税理士会」と呼ばれる法人に入会することが義務なのです。
つまり、強制加入団体で任意で加盟する団体です。
このことから税理士さんが税理士として生計をたてて行くには税理士会への加入が義務であり、脱退することは税理士としての仕事が出来ない。と言うことを意味します。
今回の「政治献金」の目的は「税理士の地位向上のため、税理士法の改正をお願いするため」と言うことらしいです。
もっともらしいお話に聞こえますが、ワタクシ的にはこの時点で凄く違和感が。
「陳情するのにお金掛かるの???」
ってところなんですよね。お金払わないと法改正の働きかけもしてくれないし、むしろ知らん顔。
地位向上とか、法的に問題があるのであれば陳情するべきですし、国民に選ばれた議員さん達であればその話に耳を傾けるべきでしょうし、
そもそも団体としてじゃなく賛同者が勝手に献金すればいいわけで。
たとえば営利目的がある団体や会社が献金する分にはわからなくも無いのですよ。
この場合、その団体や会社が得たお金で献金するわけで、加盟者や社員がお金を払うわけでは無いので、執行部の判断とその執行部を選んだ株主のお話。
ところが税理士会は非営利法人。でもって強制加入団体。
強制的に加入させているのに献金のためのお金を搾取するのはどうなの?と行き着くんですよね。
この事案とよく一緒に紹介される
「八幡製鉄所政治献金事件」というのがあります。
戦後の日本で初めて政治献金をおこなった会社のスタンスに対しての最高裁判決なのですが、
この場合は
「取締役の会社を代表しておこなう政治献金は、その額が過大であるなど特段の事情が無い限り、原則として定款・法令違反には当たらない」
と、いうことで政治献金を認めました。
論点は、営利か非営利かと言うところなんでしょうね。
組織(営利目的の)としてイイ方向に持って行ってくれる政治家に頑張って欲しい。と思っておこなう献金。
地位向上を目的に掲げ、賛同の有無問わず強制加入の会員から搾取したお金でおこなう献金。
どちらもワタクシ的には違和感があります。
「たとえば営利目的がある団体や会社が献金する分にはわからなくも無いのですよ。」
と先ほど書いてはいますが、違和感が無い訳では無くて、
結果として政治献金が出来る位の大手の言うことは聞いてくれるけど、そういう余裕の無い人達の声は受け入れてくれない。
そういう政治家が増えていけば増えていくほど、今騒がれている「格差」がより一層生まれるのではないだろうか?と。
こういう風潮が政治家がxx会の「顧問」とやらになったり、官僚が天下って「役員」になって下々がそれらの報酬のために搾取される。的な仕組みが出来上がってしまうのでは?とか深く考えちゃいますよね。
経験則なのですけど、大手が潤えば下請けの中小も潤う。というのは幻想なんですよねぇ…
戦後最大の景気とか、株価が2万円超えたとか耳にして随分経ちます。
この夏のボーナスも増えたとかどうとか… けど、近しい友人、知人の話を聞く限りそういうめでたい話は余り聞かないのですよ。
強いて言えば「無事ボーナスが出た」とか。
結局のところ金融経済と実体経済の落差というか格差というか、その辺のことそろそろお偉い先生方にも気づいて欲しいんですけどね。「プレミアムフライデー」がダダ滑りしたときに気づいてもイイだろうに。と思ってしまいます。
だって早く仕事終わったって使うお金無いのだもの。
お金持ちのため「だけ」の社会なんて生きにくい人のほうが圧倒的に多いのに。
改めてそう思わせられるお話でした。