以前、「行政書士は何屋さん?」 「続・行政書士は何屋さん?」という行政書士って何する人なの?
といった記事を掲載したのですが、行政書士の方による犯罪や事件って結構多いようなんです。何故かというと、行政書士とは士業だけれども「出来ない事」がとにかく多いからなのです。
そもそも行政書士とは
行政書士法 第一条の二
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
というお仕事。
早い話が、官公署に提出する書類の代書や、たとえば公正証書としての遺言状の作成、車庫証明書の作成、本人確認書類の作成などをやってもらうお仕事なんですね。
但し隣接士業(弁護士・弁理士・司法書士など)の法律に抵触することはできません。
行政書士になるためにはいくつかの条件があって、
行政書士法 第二条 次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者
六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条に規定する者にあつては十七年以上)になる者
ポイントになるのは第二条一項の「行政書士試験に合格した者」
この資格だけの行政書士の場合、完全に「代書屋さん」しかできないということ。
行政書士さんの犯罪の殆どが、「行政書士試験に合格した者」で弁護士資格等を有していない行政書士さんなんです。
たとえば、
中国人に在留資格を得させる目的で会社登記の申請書を無資格で作成したとして、司法書士法違反容疑で行政書士の山末晋也容疑者が逮捕された事件
山末容疑者は「違法な会社登記の申請を1千件ぐらいやった」と供述していることが分かった。
府警は、風俗店などで働く中国人女性の不法就労の温床になっていた疑いがあるとみて詳しい実態を調べる。
府警によると、山末容疑者は、平成17年に行政書士の資格を取得。18年ごろから在留資格を得ようとする中国人らからの会社登記の依頼を受けていたという。
山末容疑者は、容疑を認め、「もうかると思ってやり始めた。業務の大半が違法な登記申請だった」などと供述しているという。
府警によると、1件あたり35万円の手数料を受け取り、実際の登記手続きにかかる費用20万円を除く15万円の利益をあげていた。
22年6月ごろから255件に上る違法な手続きを行い、少なくとも約9千万円の収益を得ていたとみられる。府警は、外国人に在留資格を取得させる目的で違法な会社登記を繰り返していた疑いがあるとみて調べている。
日本経済新聞より引用
弁理士資格がないのに特許庁に商標登録を出願し報酬を得ていたとして、警視庁保安課は21日までに、東京都国分寺市東恋ケ窪5、行政書士、本多庸二容疑者(77)を弁理士法違反容疑で逮捕した。同容疑者は容疑を認めている。
同課によると、本多容疑者は2005~13年、同様の方法で約2千件の商標登録を出願し、総額約3億5千万円の報酬を得ていた。
弁理士業務は、弁理士、弁護士が行える。このほか、7年以上、特許庁の審査官を務めた人が弁理士資格を得ることができる。
同課の調べでは、本多容疑者は05年まで千代田区の弁護士事務所で米国人弁護士を補佐して商標登録を出願する業務に従事していた。同年に弁護士が死亡したが、同容疑者はその後も弁護士と一緒に特許申請をしているように装い、無資格で弁理士の仕事を続けていたという。
逮捕容疑は11年3月~12年10月、5回にわたり、弁理士資格がないのに文京区の菓子輸入会社など2社から報酬を受け、特許庁に商標登録の出願をした疑い。
と、まぁ、弁護士法や司法書士法に抵触する犯罪が多いのです。
先日の「行政書士は何屋さん?」 「続・行政書士は何屋さん?」
で紹介した板倉直壽行政書士や、「鷹悠会ってどういう会?」で紹介した高木幸聖行政書士もそうですし、「一歩間違うと誤解を生むドラマ化-行政書士編」で書いた架空の方々もそうですよね。
そもそも、行政書士という士業が何故生まれたのか?
明治以降の日本では今よりも格差がはっきりしていて、教育を受けれる人が限られていました。
故に読み書きの不自由な方が多かったので、簡単な行政手続きや書類を代書してくれる「代書屋さん」に需要があったそうです。
第二次世界大戦後になると、義務教育も普及して、高校もほぼ義務教育と言っていいほど多くの人が行けるようになりました。
さらに現在に至っては行政サービスが昔に比べて向上、簡素化されてきているので代書屋さんの需要はどんどん減ってきました。
「時代のニーズ」って言ってしまえばそれまでなのかもしれないのですが、
今の時代に「行政書士」はあまり必要なくなってきてるとも言えますよね。
車庫証明手続きもカーディーラーに委任状を渡してお願いすればやってくれるし
金融機関などで求められる本人確認書類も委任状さえ出せば金融機関の職員が準備してくれる。
というかわざわざ行政書士さんに依頼してこの手のお願いをするか?という事になるわけです。行政書士に依頼する時点でそれなりにお金も掛かりますしね。
どこかの記事で一度読んだのですが(すみません、出典どこか忘れたのですが…)
本来であれば有資格とするべきではなかったのでは?という記事を読んだことがあります。
特に戦後20年くらい経過した頃には義務教育も浸透していたわけですし。
自分で書ける物は大概自分で書きますが、書けない物の大半は法律が関わってくるときが多いので
やっぱりお願いするのは司法書士さんや弁護士資格を有してる方にお願いしています。
お願いする側もこういう部分は見極めないといけないのかもしれませんね。