永遠に続く閉店セールと同じ

一時期落ち着いてきたな。と感じていた「過払い金請求」のCM。
最終の請求リミットの2017年の12月18日まであと8ヶ月弱と迫ってきたせいか最近またCMが増えている感じがします。

そんな過払い金請求のCMがワタシの想定外の角度から問題視されているようです。
おそらく過払い金請求のパイオニアと言っても過言では無いと思うのですが、問題視されているのは「アディーレ法律事務所」

消費者庁のニュースリリース
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/160216premiums_1.pdf

要約すると、「今だけ無料」的な表現が成されていてその無料期間が、時節でどんどん延長されていく。と言う部分が景品表示法に違反するという判断し措置命令を出したそうです。
最近は減りましたが、昔街中でよく見た「閉店セール」と銘打ってるのに閉店しないお店と同じ。。。ですよね。

この措置命令を受けて、東京弁護士会を含む3つの弁護士会の綱紀委員会が、CMの中でうたっている「今だけ無料」は景品表示法に違反と判断し、懲戒審査が相当と議決されたそうです。

さて、ここで出てくる「懲戒審査」

字面を見る限りですと、「反社会勢力や悪の手先が裁かれる」といったイメージが膨らむのですが、実際には問題のある業務活動を行った弁護士にペナルティを与える方法として運用されています。
例えば、弁護過誤、依頼者への虚偽報告、過大報酬、弁護士会の会費滞納、弁護士の行方不明など多岐にわたる事案を審査する制度ということです。

殆どの士業は何かしらの監督官庁があります。
たとえば、先日行政処分を受けた行政書士の記事を書きましたが、行政書士の場合、監督官庁は総務省。司法書士の場合は法務省、税理士の場合は国税庁などなど。

しかし弁護士だけは国家が相手となる事もあるので、独立性を守るため監督官庁がありません。
そのため、弁護士会が弁護士を処分する。といった弁護士自治を行っています。

この場合、弁護士法第58条にのっとって行われます。
http://www.houko.com/00/01/S24/205.HTM#s8.1

(懲戒の請求、調査及び審査)
弁護士法 第58条
1.何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは、その事由の説明を添えて、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会にこれを懲戒することを求めることができる。
2.弁護士会は、所属の弁護士又は弁護士法人について、懲戒の事由があると思料するとき又は前項の請求があつたときは、懲戒の手続に付し、綱紀委員会に事案の調査をさせなければならない。
3.綱紀委員会は、前項の調査により対象弁護士等(懲戒の手続に付された弁護士又は弁護士法人をいう。以下同じ。)につき懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるときは、その旨の議決をする。この場合において、弁護士会は、当該議決に基づき、懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない。

簡単に手順を説明すると、
①まずは誰でも出来る懲戒請求を行う。
②次に弁護士会はその懲戒請求に対して綱紀委員会が調査を行う。
③綱紀委員会が調査の結果、審査相当と判断した場合、その旨を議決し、懲戒委員会に審査を求める。

アディーレ法律事務所の場合、審査相当と判断されて議決されてしまっているので懲戒委員会の審査待ちと言うことになります。

誰でも出来るせいか、この懲戒請求ですが2016年度で3480件出されていて、そのうち現時点で審査相当と判断されている事案が191件、さらに懲戒相当となった事案が114件あるそうです。
この件数をみると確かに反社会勢力や悪の手先以外にもたくさん居そうですよね。

ここで、懲戒相当となった場合の処分内容が今後の問題になるわけです。
2016年の114件の懲戒処分となった内容ですが、
戒告処分:60件
業務停止:47件
退会命令:3件
除名処分:4件

戒告処分(簡単に言うとお説教)が最も多いのですが、この場合業務の一定の制限は発生しますが、致命的なダメージにはならないそうです。

次に多い業務停止
先日の業務停止になった行政書士の記事で書いたのと同じで、業務停止期間中、一切の業務が出来なくなります。
つまり弁護士の場合ですと、公判中の裁判にも関われなくなりますし、顧問契約している企業に対しても何も出来なくなります。

懲戒処分の対象が弁護士法人の場合、その法人に所属している弁護士全員がその期間中何も出来なくなので、他の弁護士に作業を引き継ぐなりしなければならないと云うことになり、大打撃になると云うことですよね。

実際には、その法人内の懲戒処分対象となっていない弁護士が、別の弁護士事務所を立ち上げて業務を引き継ぐ。といった実例もあるそうですが
仮にアディーレ法律事務所が業務停止になった場合、100人以上の弁護士が所属していて、かつ相応に顧問弁護先もあるでしょうから相当困難な作業になるのでは無いかと思います。
業務停止が終わってからも茨の道ですよね。

退会命令除名処分は言うまでもありませんよね。

現時点では結果がまだ出ていませんが、アディーレ法律事務所の処分内容にどんな結果が出るかは凄く気になるところです。
この件に関して色々と記事を読んでみましたが、実際の所、「今なら無料」とうたってお金を請求したわけではなく、実際にお金を請求していないので依頼者に被害があるか?
と言われると被害はないわけなので、それほど重い処分になる事は無いのではないか?という見解が多いようですね。

まぁ確かに、無料と掲載されていてお金を取られれば、それこそ詐欺罪の話まで発展する可能性もあるわけで、法を守る弁護士さんがそんなことする事も無いと思いますが。。。

ポイントになるのは「責任の所在はどこに?」ってことですよね。
もちろん弁護士法人である以上、最終責任は代表がとるべきだと思うのですが、
今回の広告を考えた、内容を許可した、掲載したのは誰か?によって処分対象の範囲が大きく変わってくるのではないかなと思います。
ここまで来ると一弁護士ではなくて弁護士法人として処分されることは確定なのでしょうが。。。。

コンテンツ制作やCM制作を請け負った広告代理店なのか、その制作に参画した所属のスタッフ、弁護士なのか。
でも、弁護士って職業上、こういう法令的な部分に強いはずなので、広告代理店が何言っても違法性に気づきそうなもんですが。。。。

けど凄いな。

と思うのは、こんな状況下なのにアディーレ法律事務所の過払い金請求のCM、今も結構みますよね?
若干内容はソフトになった感じはしますが。
これで業務停止以上の処分が出たとき、仕掛かり中の事案の依頼者達はどうなるんだろう?とか考えちゃいます。

業務停止まではならないだろう。ってタカをくくてるのかな。

続報が出たら追記しますね。

2 件のコメント

  • 最近は過払い金で頑張っていた法律事務所の皆さんが、肝炎の訴訟でも盛り上がりはじめましたよね。
    肝炎の場合、支払元は厚労省になるんですかね?

  • 確かにCMまだやっている。
    ここ1年で3回くらいCMが変わっているように思う。
    本業で荒稼ぎしているから、CMに金かけられるのかな。

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